健康の為には運動は欠かせませんが、患者さんの中には運動の内容や運動するタイミングに誤解があるようなので説明していきたいと思います。

先日、足の痛みとシビレが強い、坐骨神経痛でお悩みの年配の男性が当院に来られました。
毎朝起きた時、しばらく動くことが出来ない位、強い痛みの症状でした。

病院に行かれていましたが、一ヶ月たっても、なかなか良くならないのでこちらに来られたそうです。

病院では痛み止めと漢方薬を処方されていました。

詳しくお話を聞いてみると整形外科の先生から、「下半身の筋力の低下がみられ、それが原因で坐骨神経痛が起きている」と説明を受けたそうです。

インターネットで下半身の筋力低下に効果がある運動を検索したら、ウォーキングが良いと書かれていたらしく、それから毎日、痛み止めを服用しながら痛いのを我慢して、2キロ以上歩いていると言われました。

なかなか良くならない理由が、その運動にあると思い、説明させていただきましたが、最初はなかなか納得がいかない様子でした。

ある程度良くなってから、行うのであれば、ウォーキングはとても良い運動ですが、今のタイミングで2キロも毎日痛み止めを服用しながら痛いのを我慢してやるべきではありません。

骨折をしたら、関節が固まることを覚悟しながら、ギプスで固定して安静にします。
まずは患部の安静が大事です。

運動のタイミングと内容については、例えば、胃腸が壊れて体重が落ち、体力がなくなっている方に、栄養と筋肉をつけるためにビフテキを大盛ご飯で食べなさいというのは自殺行為です。

まずは、おも湯→おかゆ→柔らかいご飯→普通のご飯、と少しずつ胃腸に状態を見ながら段階を上げていきます。

運動もそれと同じです。

まずは急性期の痛みが治まるまで安静して、少しずつ距離と時間を伸ばしていくという段階が必要です。

痛み止めで痛みをごまかしながら、運動をするというのは、回復をかえって遅らせることになります。

この方には、痛み止めを服用しなくてもある程度動けるようになるまで一週間くらい安静を勧め、その後は、5~10分程度のウォーキングから始めるのが良いと説明させていただきました。

運動は薬にもなりますが場合によっては毒にもなります。

体のその時の状態によって、運動内容や量を加減する必要があるのです。

健康な方が行う運動と疾患を抱えている方の運動は変える必要があるということを知っておいてください。