近年、パソコンや携帯電話などの普及によって、肩こりの質が昔と変わってきています。
昔は第一次産業に従事する方が多く、肉体労働によって起こる肩こりが多かったのですが、最近の肩こりは、デスクワークなどで同じ姿勢を続けることで起こる肩こりが増えています。
若い方においても、携帯やパソコンでのゲームや動画を楽しむ方が多いので、若い方にも肩こりは増えています。
そういった肩こりには共通の体の形があります。
それは、両肩が前に巻き込み頭が前に下がっている(目線が低い)状態になっています。
一般に肩こりと聞くと、肩が凝り固まっている。(縮んで固まって伸びなくなっている)状態と思っておられる方がほとんどです。
そのイメージでは、肩こりは固まった筋肉を「もみほぐせばいい」と考えてしまいます。
しかし実際の背中や肩の筋肉の状態は、「縮んで固まっている」のではなく、「伸びきって張っている」状態なのです。
パソコンや携帯の操作や事務作業は、すべて手を前に出した固定状態の作業です。両肩が前に巻き込み、頭が下がった状態と説明しましたが、その状態は背中や肩の筋肉が伸びきり、長時間固定化されることで戻る力を失っている状態なのです。
縮んでいるのは後ろの背中ではなく、前の胸部や腹部の筋肉です。
そうであれば、やるべきことは、「前側の縮んだ筋肉を緩め、後ろ側は伸びきった筋肉を元に戻す」ことです。
背中側の伸びた筋肉をもみほぐすと、筋肉はさらに緩みますので、感覚的には筋肉が緩んで一時的に動きやすくなったような錯覚を起こしますが、実際には、伸びきった筋肉をさらに緩めることになります。
これでは、一時しのぎでしかなく、根本的な「前の縮んだ筋肉を緩め、後ろは伸びた筋肉を元に戻す」ことにはなっていません。当然、体の形はさらに悪くなることになります。
そしてもっと悪いことは、強く揉み解しを行うと筋繊維はさらに硬くなり、強い刺激に耐性を持つようになり慢性化し、元に戻る力を失っていきます。
解剖学的には皮膚と筋が伸びきっているために、皮膚と筋肉(筋膜)の隙間が狭くなり癒着を起こしている状態になっています。
したがって背中の刺激は、筋肉を揉み解すのではなく、皮膚と筋膜の隙間を広げるような施術が求められるのです。
だからと言って、強いもみほぐしがすべてにおいて悪いという訳ではありません。
負荷がかかるスポーツや肉体労働による筋肉疲労など、筋肉がしっかしていて、筋肉内の疲労物質が溜まって固くなっている場合は、揉み解しは効果があります。
昔は肉体労働者が多かったこともあり、こういった揉み解しの施術が主流だったのですが、現代社会において、知的労働者が増えて、原因が全く違う肩こりが増えているなかで、揉み解しは逆に害になる場合が多いのです。
また、姿勢からくる肩こりだけでなく、頸(胸郭出口の問題・頚椎の異常など)・内科・心療科から肩こりがおきている場合もあります。
強い刺激でのマッサージチェアーなども状態によっては注意が必要です。
これまでしてきた効果が一時的で、猫背で慢性の肩こりでお悩みの方は、これらのことを参考にしてみてください。